怪談。猫タクシーの木曜日。

先週の木曜日だった。自転車で遠出をしたのだが、四匹の猫に遇った。

竜泉寺の駐車場のフェンスの向こうからこちらを見ていた口元に白い黒のぶち猫。

街中の飲食店の脇から出てきた、まだ幼い黒い子猫。

私の前を横切ろうとして立ち止まった、また似た様な口元の白い黒いぶち猫。

地下鉄茶屋ヶ坂駅の前を通り越した時に前から泣きながら歩いてきた子猫ちゃん。


…おそらくは地下鉄に乗るつもりだったんだろう。方角的に考えて。

彼氏の家にでも遊びに行ったが、些細な事で揉めて、それが別れ話に発展して
飛び出してきたのかもしれない。

まあ、以外に、友達の家に遊びに行って、観たDVDがすんごい泣ける内容で、
帰り道にふと、思い出したら涙がポロポロ止まらなくなったってオチかもな。

だったらいいんだけどねえ…。だったらよいのですが。


千代田橋から矢田川を渡って、堤防脇のスロープを降りる途中。

なかなか情緒のあるというか、街灯に照らされた階段を、何気ない
風景を撮りたくなって立ち止まっていると、橋の下のトンネルから乗用車が
4台、各々少し間を置いて出てきた。天井部分のランプが点灯していないタクシー


1台……。

2台……。

3台……。

同じタクシー会社でもない様子で、全てご一行様という
雰囲気でもない。

そして4台目の乗用車が走ってくる。

それは、

タクシー……ではなかった。

中型のワゴン車だった。


少々、残念な気分に浸りながらも、ふと、考えた。

一般車両と見せかけて、実は白タクと言う線もゼロではない。

可能性はないとは言えない。

まあ、しかし、こんな下らない、取るに足らない事に可能性という
言葉を無分別に使うのはどうかとは思う。

しかし、現実は小説よりも奇なり。色は即に空なり。

信じられるという事は可能性があるという事。事実、どうであったとしても。



 まあ、出遇ったものよりも、その出遇った自身が不審で怪しいというとても
 詰まらないオチ。

というか、タイトルは嘘ではないよというアリバイじみた、こじつけ。