中途半端に妥協した物語に傑作無し。"The story of an irresponsible compromise is not a masterpiece."

一つの闘いが終わり、また新しい闘いがまた始まる。
一生ってのは常に始まりと終わりを繰り返す事ではあります。

まあ、そんな事はこの投稿には大して関係のない事であったりしますけど。

最近、わりと長く続いたラノベの最終巻を読んだのですが、正直、釈然としないというか
最終巻であるはずなのに、物語がキリの良い部分まで到達してない。

ラノベにしては設定が特殊で、ファンタジーな要素が少なめで、西洋の中世的な世界が
舞台だけれども、展開されるのはありがちな英雄譚でも、冒険譚でもない、お金にまつわる、
様々な儲けに絡んだ事件が展開していくという、異色なお話が面白くて読み続けていた
訳ですが。

まあ、さすがにそれだけだとラノベとして、エンターテイメントとして味気なさすぎるので、
ちゃんとファンタジーな要素もあったりするのですが。


現実的な側面を持ちつつも、あくまで作り話。

理屈のみで積み重ねていけば、まあ、あり得ないなんてことはないのですが、
ライトノベルなんですから、ジュブナイル的な要素を軽んじすぎてもそれはそれで
おかしいですよ。

夢の話なのに、何とも夢も希望もありゃしない。

どんだけ、チープであろうが、めちゃくちゃだろうが奇跡が起きても何ら問題はないと思うのですが。

救いが無いのなら、無いで、もっと絶望的な悲劇的な展開でいいのではないでしょうか。


変に、失敗しない、お互い傷つかない所で折り合いをつけるというのは現実的でしょうが、
ドラマチックじゃない。

仮にも、色々な、命に関わるような危険に遭遇しながらも、それらを乗り越えてきた主人公が
疲れてしまって背中を丸めて縮こまるような展開。いや、それすらもない、微妙なところで
妥協している、諦めてしまったかのような所で、終了なんて物語として酷いのではないでしょうかね。

物語の主役ってのは模範解答を出して満足するなんてことはしてはいかんでしょうに。

オールオアナッシングでしょ。

みんな無理だと諦める所にしがみついてこそ主人公でしょ。

各巻で、絶望的な状況を打破しておいて、一番の肝心要の問題を妥協するって、今までの
展開が勿体ないでしょうに。

なんでそこでもっと藻掻けないのよ。

「人はいつか死んでしまうから」なんて、ヒポコンデリーなのも大概にしておけよと。

人が死ぬのは心臓が止まった時でも、脳が機能しなくなった時でもない。
「誰からも忘れ去られた時」だろうに。

お金ってのは、経済ってのは極めて現実的な、唯物的なものに思えるかも知れないけど、
違いますよ。

お金ってのは人の思いの具現化したものでもあるんです。

だって、株価も通貨も物の価格だって、変動する時にはそこに人の感情が反映されている
でしょう。

事実無根であろうとも、人が想像して動き出すことによってお金も動き出すんですよ。

だから、お金とか、商売をテーマとして物語を描けたわけですから。

まあ、ウダウダ言いつつも、物語はそれなりに今まで楽しめたので、それはそれで良かった、
無駄でもないのですが、作家さんにはもう少し諦めないで欲しかったなあと。

作家さんの次回作を期待してお待ちしてます。くれぐれも一発屋で終わらない、ただのばくち打ちで
終わらない事を願っております。