Gの季節:深夜の死闘

 

つい先刻、水でも飲もうかと、台所へ…。

蛍光灯のスイッチを入れ、コップに水を注ぎ、

一口飲む。北側の白い壁面を何気なく見る。

限りなく黒に近い茶色の楕円形。そこから伸びた

長い2本の線がウネウネ。

目が合っったみたいでバツの悪い空気が漂う。

 

とっさに何か武器は無いかと周りを見回す。

キッチン用消毒アルコールのスプレー容器を

手に取る。殺虫スプレーほどの殺傷力はないが、

吹きかけるごとに確実に動きが鈍くなる。

急性アルコール中毒で身動きが取れなくなった

所でとどめを刺せば良い。

瞬間的な威力は期待できないが、揮発してしまえば

害は無いのである意味使いやすい。

 

一撃を浴びるがそれですぐに弱る訳でもなく、

壁面を下り、床の端を駆ける。しかし、行き止まり。

さらに一撃を食らうが、方向転換してガスレンジのある

方へ向かう。またしても追い詰めららるが、収納の扉の陰に

隠れる。

 

完全に見失った…。辺りを探すが見つからない。

流しに目をやるとさっきの標的よりも小さい黒い奴が。

まあ小さい個体なので2~3回吹きかけるとすぐに

動きが弱るのでさらに追い打ちに数回かけてやれば

アルコールの海に沈む。

 

で、ふとガスレンジの上の端に目をやると居た。さっきの奴。

わざわざ逃げ場の無い所に出てきてくれた。

思いっきり浴びせてやる。それでも動き回るがもう明らかに

動きが鈍くなる。でも逃げる。まだ逃げる。しかし確実に

ペースが落ちる。そして動きが止まる。ひっくり返って

六本の脚をばたばたさせる。が、すぐに静かになる。

 

長かった…

コップの水を飲み干す。

しかし、すべてが終わった訳ではない。この季節、

この陽気、また第二、第三の黒い奴が現れる。確実に。

今後の対策を考えなければ…

戦いは今始まったばかりなのだから。

 

~第一部完~