人生は時間との戦いなり "Life is a struggle against the time"

春が来る前触れに急に気温が下がって真冬に
戻ったような日がよくあるそうですが、まあ、今日は
そういう日のようです。

そういう日に限って自転車で遠出しようとか予定を
立ててしまうのですが、まあ、動いている分にはむしろ
丁度良い寒さですし、身体が冷え切った状態で入る
風呂というのもなかなか良いものです。

それはさておいて。

本日、会期があとわずかになった愛知県美術館の
「クリムト 黄金の騎士をめぐる物語」展を観てきました。
さすがに超有名なだけあって金曜日の夕方の人の入り
は多かったです。

割と最近放映された、といっても去年の事ですが、NHKの
日曜美術館のクリムトの特集のイメージで観てしまうと、
随分違った印象で、クリムトの絵の展示というよりは
クリムトらのウィーンでの総合的な芸術運動が中心に
なっていて、ポスターや機関誌などのグラフィックデザイン、
家具、インテリア、食器、アクセサリーなどの工芸、建築から、
「黄金の騎士」などの作品のイメージの元になった甲冑、
ジャポニスムに関連して日本の工芸品、着物、布地、
染めの型紙などバラエティーに富んだ展示でした。

いわゆる「黄金期」な感じの作品はメインの展示作品である
「人生は戦いなり」だけで、「医学」「哲学」「法学」の原寸大
パネル、「ベートーヴェン・フリーズ」の一部原寸大パネル、
「ストックレー・フリーズ」の下絵の原寸大複製パネルで
ストックレー邸食堂のレイアウトで展示。

やや不満が残るものの、まあ、重要な作品を観るには
ウィーンに行かなければ無理ですかね。

グスタフ・クリムトは画家というよりは装飾家という
イメージでみた方が、しっくりと来る気がします。

個人的にストックレー・フリーズの渦巻き「生命の樹」、
がどうにも好き過ぎて。

そもそもは昨年の個展、トヨタホームのギャラリーでの
「楽しいHOME展」の会期中に福犬の装飾に唐草模様
をイメージして金紙を渦巻き状に会場で貼りつけたり
していた時にたまたま見たナゴヤアートニュースの
展示情報に載っていたストックレー・フリーズの「期待」
部分の写真を見て背景の生命の樹の渦巻きを見て
「これは」とひらめくものがあったのがクリムト展に行く
きっかけであったりしました。

今回、同じ美術展を2回観るという事をしてみたのですが、
一回目にじっくりと回って、後日、カタログを読み込んで
行くとまた見え方が変わってきますし、前回気が
つかなかった所に目が行ったり、新しい発見があったり
2回分の料金に見合う、それ以上の価値があるかも
知れません。

昨今はスピード、早さが尊ばれる時世ではありますが、
例えば同じ道程をゆくにしても、自動車で行くのと、自転車で
行くのと、徒歩で行くのでは全く見える風景は違います。
移動速度が速くなればなる程に、記憶に残る場面は
少なくなります。

作品の前をさっと通るように観るのではイスに
腰掛けて眺めた時と得られる情報の量は違います。
個人的に腰を痛めてから、展示をざっと流して観るような事
があまりできなくて、休憩がてらイスに座って、
リラックスして作品を鑑賞する事は実によいものだと
思うこの頃です。

やや話がそれましたが。
本来の目的としてはやや残念ではありますが、
ヨーロッパの各国の芸術運動のつながりが見えたような
展示で良かったかと思います。


帰りに地下のミュージアムショップに寄ったら、クリムトの
最新の画集が出たらしく、店頭に置いてありましたが、
豪華で、大きくて、分厚くて、すごい興味を惹かれ
ましたが、お値段も2万5千とそれなりにすごい事に…

いつか手に入れたいものです。